GREEN THUMB(グリーンサム)
レポート
2019.11.05
フード|FOOD

GREEN THUMB(グリーンサム)

人気ベーカリー「365日」シェフが監修
“近未来のパン”を創造するベーカリー、渋谷に誕生!

大規模再開発で人が溢れる渋谷駅から少し離れた桜ヶ丘エリアに、今年5月、代々木八幡の行列ができる人気ベーカリー「365日」のシェフ・杉窪章匡さん監修のベーカリー「GREEN THUMB(グリーンサム)がオープン。「365日」のパンから形や食感も進化した、さらに先を行く”近未来のパン”を提供すると聞き、取材に訪れた。

同店があるのは、渋谷駅西口から徒歩7分ほど、国道246号の歩道橋を渡ったセルリアンタワーの小道沿い。セルリアンタワーや渋谷インフォスタワーなどIT企業が集積する大型複合ビルのほか、日本経済大学東京渋谷キャンパスや文化ファッションインキュベーションスペースなどの教育施設も点在。代官山方面に向かうと、住宅街が広がる閑静なエリアだ。
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味わいや触感が異なる食パンは4種類を用意。ハード系のパンも充実している

コンセプトは「育てる、愛でる」

店舗の前には小麦とハーブのガーデンファームがあり、外壁にはゴーヤやピーマンなどの野菜や果物、エディブルフラワーなど季節の植物が育つ。店内ショーケースには小ぶりなパンが豊富に並び、奥のガラス張りのキッチンではパン職人が作業する姿が見られる設計だ。店前にはファームを囲むようにしてベンチがあり、購入したパンを片手に休憩しているお客さんの姿も見られた。

運営するのは、中目黒のビーントゥバー・チョコレート専門店「green bean to bar CHOCOLATE(グリーン ビーン トゥ バー チョコレート)」(中目黒)などの飲食店を手掛ける「株式会社ロイヤル・アーツ

同店のコンセプトは「育てる、愛でる」

「”グリーンサム”とは園芸の達人という意味。パンをうまく作れる人は、植物を上手に育てられる人と共通する。小麦は”農産物”ということを理解し、素材を見極めて作ることで、おいしいパンができるという想いを表しています」と、同店のプロデュースを手掛けたシェフの杉窪章匡さん。
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コの字型のカウンターを囲むようにパンが並ぶ。商品は毎日約60種類をラインナップする
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「グリーンサム」のパンは素材の組み合わせや食感などが複雑に絡み合う、まさに“近未来のパン”

”シティファーマー”(都市農業による食料生産)の考え方を取り入れた店づくり

杉窪さんが抜擢されたのは、ロイヤル・アーツ代表の安達建之さんからのラブコール。もともとパン好きだという安達さんがいろんなお店を巡るなかで、“都市型のパン屋”を出店するにあたり描いていた食への想いを理解してくれるのは杉窪さんしかいない、と直接依頼をしたことがきっかけだ。そして、ここ渋谷に店舗を作ることが決まったときに、杉窪さんの頭の中に一番初めに浮かんだのは「近未来の都市型ベーカリー」だったという。

「渋谷という場所、人を育てる学校というバックボーンから、未来を見据えた店づくりが必要だと感じました。東京という街の生活者として、いまの”食”を未来に繋げていくために、欧米で注目されている”シティファーマー”(都市農業による食料生産)の考え方を取り入れたお店を作ろうと構想しました」(杉窪さん)。

杉窪さんはパティシエとしてキャリアを積んだ後、パン職人に転身、2013年に独立して「ウルトラ・キッチン株式会社」を設立。名古屋、福岡、東京・向ケ丘遊園などでパン屋を次々とプロデュースすると同時に、2013年12月にはオーナーシェフとして初となる店舗「365日」をオープン。パン屋でありながら、全国の生産者を訪ねて厳選した食材を扱うセレクトショップとして話題を集めると同時に、従来の日本のパン作りの常識を覆す気鋭のパン職人として注目を集めてきた。さらに、2015年には新しいカタチの総合食料品店「15℃(ジュウゴド)」をオープン、現在は京王百貨店新宿店や、日本橋高島屋S.C.新館にも店舗を拡大している。
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店を囲む植物は全て食べられる種類が植えられている。ファームの監修は元パタゴニア日本支社長で「SEEDS OF LIFE 」代表のジョン・ムーア氏が担当した
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店の前ですくすくと育つのは小麦。収穫体験もするなど“ファーム”としてしっかり機能している

パンは生まれて育つ”農産物”

もともと石川県の輪島塗職人の家系に育った杉窪さんは、素材に関しても人一倍こだわっている。2015年には生産者と製粉会社、流通業、パン職人、消費者が一丸となり採れたての国産小麦を楽しむためのプロジェクト「新麦コレクション」を設立。安全・自然・公平な食のありかたを提案しながら、飲食店のプロデュースやコンサルタント事業なども幅広く手がける。

ガーデンファームを作ったのは、食べる人やパン職人に、ただ消費するだけでなく、パンは生まれて育つ”農産物”という意識を持ってもらいたいと思ったから。『育てる、愛でる』のコンセプトに沿い、店内には器や陶器などのアートギャラリーを併設し、心や感性が”育つ”場所をイメージしました」(杉窪さん)。

一方、ロイヤルアーツ代表で専門学校ビジョナリーアーツ理事長を兼任する安達さんは、教育やデザインの分野から長年飲食業界に関わってきた。2015年には「green bean to bar CHOCOLATE」で飲食店運営をスタートし、今年1月にロースタリーカフェ「WHITE GLASS COFFEE(ホワイトグラスコーヒー)」(ビジョナリーアーツ校舎1階)をオープン。「大量生産ではなく、より良いものを好む人たちに喜んでもらいたい」と、素材や製法にこだわり、安心安全に食を届ける”クラフトマンシップ”を重視した店づくりを目指してきた。
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ギャラリーゾーンでは陶器や器を中心とした作家ものを扱う。厨房が見える作りも安心・安全の表現だ

6種の国産小麦を使い分け。小麦の個性を味わえる4種類の食パンも

「2011年ごろから、日本でパンの消費量がお米を抜き主食になったという背景もあり、ゆくゆくはパン屋に挑戦したいと考えていました。昨年4月ごろからベーカリーの構想を始めたのですが、素材にこだわり新しい製法でパン作りを行う杉窪さんなら、新しい時代にふさわしい店づくりのビジョンを共有できると感じ、店舗プロデュースを依頼しました」(ロイヤルアーツPR・島田まなみさん)。

商品は、食パンから惣菜パンまで1日に約60種類をラインナップし、価格帯は200~300円程度。国産小麦6種を使い分け、パンごとに成形方法や火通りなどを変えて、味はもちろん、歯切れや舌触りなどの食感までこだわっているという。例えば8の字型の看板商品「グリーンサム」(セサミ・シード・オニオンの3種類、サンドイッチにすることも可能)は、通常茹でて作るベーグルを、焼いて作った”未来系”のベーグル。埼玉県川越市周辺でとれる小麦「ハナマンテン」を100%使用したベーグルは、食べるともちもち食感なのに歯切れが良く、小麦の奥深い風味が堪能できる。

ほかにも国産小麦の個性が味わえる4種類の食パン、なめらかな生地が特徴の定番あんぱん、独自の巻き方で一口ごとに食感の違いが楽しめるクロワッサン、店先のファームでとれた花々を使ったパンなど、シチュエーションごとに楽しめる多彩なラインナップが魅力だ。
 
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店名を冠したパン「グリーンサム」はロゴと同じ八の字の形が特徴的な“茹でない”で作る新感覚のベーグル
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「グリーンサム」のパンでオーダーを受けてから作るサンドイッチも限定で用意。パン、フィリング、具材、トッピングを自由に選んで好きにアレンジ可能
「目新しいパンが多いなか、意外にもあんぱんといったスタンダードなパンの需要も高いのには驚きました。客層は多彩で、周辺のオフィスワーカーや学生、セルリアンタワー東急ホテルの国内外の宿泊客、さらに毎日のパンを買いにいらっしゃる地元の方々と、年齢層も幅広いですね」(PR・島田さん)

また「グリーン ビーン トゥ バー チョコレート」や「365日」のファンのほか、インスタグラムで人気のハッシュタグ「#パンスタグラム」「#パンのある暮らし」などを見て遠方からやってくる”パンラバー”や“パン好き女子”たちの姿も目立つという。「グリーンサム」のパンは徒歩すぐの場所にある「ホワイトグラスコーヒー」に持ち込むことも可能で、コーヒーやドリンクと合わせてできたてのパンを楽しむ人も。

ちなみに、おやゆびの”8の字”を模した同店のロゴは、フランスを拠点に活動する書家のMaatya Wakasugiさんによるもので、麦の穂を筆にして書いたもの。“無限大”にも見えるかたちは、近未来と昔を表しており、”近未来を見つめながら昔のいいものを取り入れる”という意味合いも込められている。
 
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実は「グリーンサム」の商品は、すぐ隣の系列店「ホワイトグラスコーヒー」に持ち込むことができる

近未来を担う若者の育成にも貢献

一方、杉窪さんの近未来の姿はというと、「独立後10年間(2023年まで)で売上10億円を超えること」を目標としているのだそう。

「そこで、初めて経営者としてのスタートラインに立てると思っています。その後は、今以上に『やりたいことをやる』を追求していきたいですね」(杉窪さん)。

なお、「グリーンサム」ほか、ロイヤルアーツが運営する飲食店では、提携の専門学校ビジョナリーアーツの学生インターンの受け入れも行っている。学生にとってはプロが働く現場を体験する貴重な機会となり、学校としても質の高い独自の教育を提供できるメリットがあるという。店舗の運営と同時に、近未来を担う若者の育成にも貢献しているというわけだ。

渋谷という大都市の真ん中で、自然と隣り合い新しい食のカタチにチャレンジする「グリーンサム」。今後も地域に寄り添いながら、季節に沿った新しいパン作りに挑戦していく予定だ。

【取材・文=フリーライター・エディター/渡辺満樹子】


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