stopover tokyo(ストップオーバートーキョー)
レポート
2013.12.05
フード|FOOD

stopover tokyo(ストップオーバートーキョー)

ファッションブランドが発信する、ショップ・レストラン・ライブラリーを併設した複合店

スマートフォンやタブレット端末の普及も後押しし、ネットでモノを買うことが日常化している昨今、リアルショップの吸引力がますます求められている。そんななか、アパレル×飲食などの複合店が相次いで登場。消費者との接点を多面的にすることで、新たな集客へと繋げているのだ。
ライブラリーには代表の鷲尾さんが長年コレクションした2,000冊以上の本やが並ぶ。いずれも閲覧可能。
stopover(ストップオーバー)はシンプルでありながら細部にまでこだわったリアルクローズ。
ニューヨークのetiquette clothiers(エチケットクロージャー)。ソックスとアンダーウェアを扱う。
雑貨では、Miller et Bertaux(ミレー・エ・ベルトー)のフレグランスやscents by land(センツオブランド)キャンドルなどをそろえる。
washiwo(ワシヲ)。「エレガンス」「クラシック」「バランス」をキーワードに、オートクチュールの技術を落とし込んだドレスブランド。
今年9月2日に南青山にオープンしたstopover tokyo(ストップオーバートーキョー)もその一例だ。オリジナルとセレクトのアパレルショップ、2,000冊を超える本&雑誌を閲覧できるライブラリー、レストラン、そして自社オフィスで構成される。母体は、ファッションブランドstopover(ストップオーバー)washiwo(ワシヲ)などを展開する有限会社ワシヲ。
 
オーナー兼デザイナーは鷲尾昭典さん(41歳)。鷲尾さんは服飾専門学校卒業後、アパレル企業数社で営業やパタンナー、新規ブランド立上げに携わり、マイケル・タピアのパターンも担当していた。退職後の2001年には、半年間にわたる世界一周旅行へ。このときに五感で感じたことが、ものづくりの原点になっているという。帰国すると会社を設立し、2002-03秋冬からstopoverをスタート。もともと百貨店などへの卸を主体にしていた同社にとって、今回の複合スペースstopover tokyoは初のリアルショップで、構想には約8年を費やしたという。
 
「ブランドを立ち上げた2000年前後は、インディペンデント系ブランドが注目されていて、合同展示会rooms(ルームス)が始まったりとブランド側の売り手市場でしたね。しかし、2006年頃に、卸売り主体では尻すぼみになってしまう、これからは自分たちで発信していかないといけないと思うようになりました。ちょうどその頃はネットが一般的に浸透し、ブログやホームページなどの様々な表現ツールが出てきました。昔はファッションや音楽でしか自己表現ができなかったのが、表現ツールが多様化していくなかで、ファッションの発信力が弱くなっていると感じました」(有限会社ワシヲ/鷲尾昭典さん)
 
2006年当時、今後はファッションのみでブランドを存続していくのが難しくなっていくとも感じたという鷲尾さん。当初から飲食店を含む複合店を考えて店舗立ち上げに動いたが、イメージする物件に出合えないなど計画は思うように進まかった。2010年にオフィスを構えていた渋谷区渋谷が再開発計画のエリアに決定。2013年に立ち退かなければならず、4月の自社展示会終了後に物件を探し始めたところ、5月末には理想通りの「内階段で移動できる2フロア」という物件に出合えたそうだ。
 
場所は青山通りから路地を入った住宅街の一角。1階をレストラン、2階をオフィスとショップ兼ライブラリースペースに充てた。レストランは22坪、オフィス10坪、ショップなどは12坪。白を基調とした清潔感ある空間は、都会的なナチュラルさがあるニューヨークのソーホーをイメージしたそうだ。
 
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ディスプレイには飛行機のスーパーシートの椅子が!ヘッドレストはオリジナルの飛行機柄。
stopover airlinesは、架空のエアライン会社を設定し、オリジナルプリントで表現するトラベルグッズを主体としたブランド。
1階のレストランstopover tokyo lounge(ストップオーバー・トーキョー・ラウンジ)は無国籍料理を提供。
青山「CAY」「タヒチ」などで料理長を務めた新宮彰さんがメニューを手がける。
土曜日限定メニューの、機内食をイメージした「エアラインコンボ」(1,680円)
商品構成は自社のユニセックスブランドstopover(ストップオーバー)、ドレスブランドwashiwo(ワシヲ)の洋服やドレス、航空会社をテーマにしたstopover airlines(ストップオーバーエララインズ)のオリジナル雑貨。また、washiwo(ワシヲ)ではウエディングドレスのフルオーダーを手掛けるという。セレクトではetiquette(エチケット)の靴下やアンダーウェア、Scents of LAND(センツオブランド)のキャンドルなど、鷲尾さんが好きと思えるものを集めたという。

「人が集まるための場所、アトリエの一部と捉えているので、売上見込みは立てていません。ふつう、店は家賃や人件費、光熱費などの経費に対する予算で商品仕入れをするのが一般的。だから売れないと在庫過多になり値下げをするというスパイラルにはまってしまうんです。2階のショップ部分は予算をつくらずに、売れなくてもいい!という前提で構成し、自由な店作りをしています」(鷲尾さん)

価格帯は、stopoverが5,000~2万円、washiwoは1万円~15万円まで(ウェディング含む)。商品の合間に並ぶファッションやデザインなどに関する本や雑誌は、鷲尾さんが20年以上に亘って集めてきたもので、店内で自由に閲覧が可能だ。

レストランは鷲尾さんの13年来の知人である新宮彰さん(59歳)がシェフを務める。青山CAY(カイ)などのレストランを立ち上げ、料理長を務めた新宮さんが手掛けるのは、「旅するレストラン」をテーマにした無国籍料理。タイ料理をベースに、フレンチ、メキシコ料理などのメニューを提供する。メニューは、前菜またはスープとデザート付きのランチは「グリーンカレー」(1,260円)、「蒸し鶏ごはん」(1,050円)、土曜日限定で機内食をイメージした「エアラインコンボ(メイン、前菜、サラダ、デザート、ドリンク2種)」(1,680円)のほか、「蒸し豚のバナナ葉包み」(945円)、「スペインオムレツ」(945円)など多彩なラインナップだ。

ターゲットは、1階レストランは30歳以上、2階のショップは設定していない。来客層はいずれも30代以上が中心で、大通りと離れた住宅街にあるため、ネットや雑誌の掲載情報を見て来店する目的客が大半だ。

「今の時代、ブランドを発信するには洋服だけを揃えるのではダメ。仮想ではない対面的なコミュニケーションができる場をつくらないと、絶対に人も情報も、ネットワークも集まらないという考えがありました」(鷲尾さん)

ECの充実やネット上のコミュニケーションが加速するなか、同店のライブラリーやレストランのような、絶対に足を運ばなければ手に入れられない感覚を提供できる場を併設する小売店が今後も増えそうだ。

[取材・文/緒方麻希子(フリーライター/エディター)]

stopover tokyo(ストップオーバートウキョウ)

東京都南青山3-8-14 パーク青山103号
03-3478-1091
営業時間/stopover tokyo lounge 12:00~24:00、
stopover tokyo library 13:00~20:00
定休日/日祝


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