“魚はスーパーで購入する”というのが主流になっているいま、都立大学駅そばに2015年9月にオープンした魚屋「sakana bacca(サカナバッカ)」が、新しい「まちの魚屋」として注目されている。ブルーと白を基調としたガラス張りの明るい外観は、まるでカフェやレストランのようなおしゃれな佇まいだ。2014年12月に武蔵小山に1号店をオープン以降、中目黒、都立大学、梅ヶ丘、戸越公園と順調に店舗を増やし、現在都内に全5店舗を展開している。
今回取材で訪れた都立大学店は、ちょうど夕食前ということもあり、老若男女で活気に溢れていた。店舗内の大きなガラスケースには全国各地から届いたばかり の丸魚が並び、切り身や刺身のほか、丼ものといった惣菜、調味料や乾物、書籍なども揃う。ケースに並べられた丸魚はその場で好みに加工オーダーができ、ス タッフにおすすめの食べ方やレシピも教えてもらえる。
「ふだん魚屋に行かない人でも”入りやすく、聞きやすい”ことを重視した。食べておいしいだけではなく、魚の楽しさを知り、魚のいろいろな事を経験できるような店作りを目指しました」と、同店を運営する株式会社フーディソン(東京都中央区)の田中章博さんは話す。
コンセプトは「産地のおいしい水産品をもっと楽しく」。ハチビキ(鹿児島)、アオハタ(長崎)、エボ鯛(長崎)など全国から届く産直ものを中心に、スーパーではあまり見られない“少量多品目”の魚介類を豊富かつ安価に揃え、試食や魚の解体ショーなどのイベントも開催している。
フーディソンは、2013年4月に代表・山本徹さんを中心に数人で立ち上げた水産物の卸・小売を手がけるベンチャー企業。わずか3年間で社員80人を超える企業へと発展している。もともと医療業界で事業を行っていたという山本さんが同社を立ち上げたきっかけになったのは、1人の漁師との出会いだという。漁師人口の減少と高齢化、燃料の高騰が進むなか、ガソリン代もまかなえない魚価で売買取引が成立している厳しい現状を知り、水産業界に問題意識を持ったそうだ。
そんなフーディソンは、小売だけでなく、「ITを活用して水産流通のプラットフォームを再構築すること」をミッションに改革を目指している。これまでの水産流通のルートでは、まず全国の”生産者”が獲った水産物は、”産地市場”に届いてセリにかけられ、その後、築地市場などの”消費地市場(中央卸売市場)”を通り、小売店や飲食店に届く。しかし、「時代が変化し、旧来の市場流通モデルだけでは消費者のニーズを満たしきれなくなっている」と田中さんは指摘する。
フーディソンは、2013年4月に代表・山本徹さんを中心に数人で立ち上げた水産物の卸・小売を手がけるベンチャー企業。わずか3年間で社員80人を超える企業へと発展している。もともと医療業界で事業を行っていたという山本さんが同社を立ち上げたきっかけになったのは、1人の漁師との出会いだという。漁師人口の減少と高齢化、燃料の高騰が進むなか、ガソリン代もまかなえない魚価で売買取引が成立している厳しい現状を知り、水産業界に問題意識を持ったそうだ。
そんなフーディソンは、小売だけでなく、「ITを活用して水産流通のプラットフォームを再構築すること」をミッションに改革を目指している。これまでの水産流通のルートでは、まず全国の”生産者”が獲った水産物は、”産地市場”に届いてセリにかけられ、その後、築地市場などの”消費地市場(中央卸売市場)”を通り、小売店や飲食店に届く。しかし、「時代が変化し、旧来の市場流通モデルだけでは消費者のニーズを満たしきれなくなっている」と田中さんは指摘する。
「昨今の市場はスーパーなど大手量販店の買う力が強くなっていて、大量仕入れで単価を安くするため、生産者を圧迫しているのが現状です。日本近海には3,000種を超える魚種がいるといわれ、知られていなくてもおいしい魚はたくさんいる。しかしサンマやブリ、サバなど馴染みがあるもののほうが流通しやすいため、漁獲量の少ない魚や珍しくて売りにくい魚はどうしても取扱いが減ってしまうんです」(田中さん)。
さらに、野菜や肉などの生鮮食品と異なり、水産物は産地直送が難しいという。
「季節や日ごとに漁獲量が変わるので相場が変動しやすいですし、日持ちがしないので扱い自体も難しい。魚の種類も多いので、知識や技術も必要です。ですから、市場は速やかな販路を安定的に保つ役割を果たしているわけです」(田中さん)。
世界有数の魚食大国として知られる日本だが、“魚離れ”により長期的に消費量の減少が続いている。水産庁のデータ(平成24年度「水産白書」)によると、世界的に1人当たりの食用魚介類消費量が増大するなか、世界の人口100万人以上の国の中で1972年以降1位を保っていた日本は、2007年にポルトガル、2008年には韓国にも抜かれ、3位に転落。また、魚介類の国民1人1日当たり摂取量の推移をみると、2006年には統計上初めて肉類の摂取量が魚介類を上回った(平成22年度「水産白書」より)。
さらに、野菜や肉などの生鮮食品と異なり、水産物は産地直送が難しいという。
「季節や日ごとに漁獲量が変わるので相場が変動しやすいですし、日持ちがしないので扱い自体も難しい。魚の種類も多いので、知識や技術も必要です。ですから、市場は速やかな販路を安定的に保つ役割を果たしているわけです」(田中さん)。
世界有数の魚食大国として知られる日本だが、“魚離れ”により長期的に消費量の減少が続いている。水産庁のデータ(平成24年度「水産白書」)によると、世界的に1人当たりの食用魚介類消費量が増大するなか、世界の人口100万人以上の国の中で1972年以降1位を保っていた日本は、2007年にポルトガル、2008年には韓国にも抜かれ、3位に転落。また、魚介類の国民1人1日当たり摂取量の推移をみると、2006年には統計上初めて肉類の摂取量が魚介類を上回った(平成22年度「水産白書」より)。
「水産業界全体が盛り上がるには、何よりも産地が元気にならなければ」という考えのもと、同社は産地から消費者までをスムーズにつなぐしくみ作りのために、①水産流通システムの開発・運営、②レストランや飲食店向けの卸売(BtoB)、そして、③小売(BtoC)と大きく3つの事業を行っている。
「これまでは、産地や市場、小売店が入荷情報や受発注の処理、経費精算などをそれぞれがやっていて、大変な手間になっていたんです。これらをデータベース化することで、データのつけ合わせやコストの算出をより効率的に産地で得られた情報を透明性を維持したまま伝えることができると考えました」(田中さん)。
その中で生まれた卸売サービス「魚ポチ(うおぽち)」は、月間250種を超える新鮮な魚が1匹からスマホやパソコンで注文・購入できるシステムで、利用登録店舗は4000店超。これまで電話やFAXから注文していたものをデータベース化し、Web上での簡単な取引を実現している。
「これまでは、産地や市場、小売店が入荷情報や受発注の処理、経費精算などをそれぞれがやっていて、大変な手間になっていたんです。これらをデータベース化することで、データのつけ合わせやコストの算出をより効率的に産地で得られた情報を透明性を維持したまま伝えることができると考えました」(田中さん)。
その中で生まれた卸売サービス「魚ポチ(うおぽち)」は、月間250種を超える新鮮な魚が1匹からスマホやパソコンで注文・購入できるシステムで、利用登録店舗は4000店超。これまで電話やFAXから注文していたものをデータベース化し、Web上での簡単な取引を実現している。
そして、小売部門の核となるのが、小売店の「サカナバッカ」というわけだ。
「場所は食への関心が高い女性やファミリー層が多いエリアで、通行者にアピール出来る路面店を選んでいます。女性が入りやすいような外観・内装や、制服などのデザインにもこだわっています」と田中さん。
客層は店舗によって異なるが、都立大学店は30代以上の女性客が中心で、リピーターも少なくないという。週末は子連れ客が増え、平日は、朝イチは新鮮な丸魚を求める飲食店の方が、日中はランチ用のお惣菜目当て、夕方は晩ご飯用にという近隣住民の方が中心だという。
「商品は全国から届く産直が2割、築地市場や大田市場からが8割。北海道から沖縄まで全国20か所以上の仕入れ先から毎日1〜2回入荷があります。都立大学店は、馴染みの魚よりも少し珍しい魚が良く売れていて、食べ方も煮物や刺身だけではなく、アクアパッツァなど少し変わったレシピが喜ばれます。魚屋から転職したスタッフでも初めて見る魚も多く、産地の方に連絡して捌き方や食べ方を聞くことなんかもありますね」(同店店長の見元拓さん)。
また、魚をもっと楽しく知り、おいしく食べるために定期的にイベントも開催。今年2月には三重県と三重県漁業協同組合連合会と連携し、伊勢まぐろなどの水産品を特別価格で販売する「三重マルシェ」、昨年には福井県坂井市との水産品特化型地方創生イベントを開催し、地元の珍しい魚介や新鮮な甘えびを販売するなどして好評を博した。
「場所は食への関心が高い女性やファミリー層が多いエリアで、通行者にアピール出来る路面店を選んでいます。女性が入りやすいような外観・内装や、制服などのデザインにもこだわっています」と田中さん。
客層は店舗によって異なるが、都立大学店は30代以上の女性客が中心で、リピーターも少なくないという。週末は子連れ客が増え、平日は、朝イチは新鮮な丸魚を求める飲食店の方が、日中はランチ用のお惣菜目当て、夕方は晩ご飯用にという近隣住民の方が中心だという。
「商品は全国から届く産直が2割、築地市場や大田市場からが8割。北海道から沖縄まで全国20か所以上の仕入れ先から毎日1〜2回入荷があります。都立大学店は、馴染みの魚よりも少し珍しい魚が良く売れていて、食べ方も煮物や刺身だけではなく、アクアパッツァなど少し変わったレシピが喜ばれます。魚屋から転職したスタッフでも初めて見る魚も多く、産地の方に連絡して捌き方や食べ方を聞くことなんかもありますね」(同店店長の見元拓さん)。
また、魚をもっと楽しく知り、おいしく食べるために定期的にイベントも開催。今年2月には三重県と三重県漁業協同組合連合会と連携し、伊勢まぐろなどの水産品を特別価格で販売する「三重マルシェ」、昨年には福井県坂井市との水産品特化型地方創生イベントを開催し、地元の珍しい魚介や新鮮な甘えびを販売するなどして好評を博した。
日本人にとって最も身近な食材でありながら、案外生産地や流通など分かりにくい部分も多かった“魚”。多くの消費者が商品の安全性や透明性を見つめ直す昨今、ITを活用して業界全体をつなぐ新たなしくみ作りを行う同社は、今までの魚屋にはなかった価値と楽しさを提供し、全国各地の水産物の消費拡大に着実に貢献している。
「消費者ニーズを掘り起こして、今までの魚屋にないバリューを提案していきたい。まずは水産業に着手していますが、将来的には“世界の食をもっと楽しく”をミッションとして食の世界にイノベーションをもたらしたいと考えています。きれいごとではなく、食生活の広がりは人生の幸せや満足に直結しますから」(田中さん)。
取材・文=フリーライター・エディター/渡辺満樹子
「消費者ニーズを掘り起こして、今までの魚屋にないバリューを提案していきたい。まずは水産業に着手していますが、将来的には“世界の食をもっと楽しく”をミッションとして食の世界にイノベーションをもたらしたいと考えています。きれいごとではなく、食生活の広がりは人生の幸せや満足に直結しますから」(田中さん)。
取材・文=フリーライター・エディター/渡辺満樹子
sakana bacca (サカナバッカ) 都立大学
東京都目黒区中根 2-13-1 サーラ都立大学1F
電話番号: 03-6421-3785
営業時間: 10~20時
電話番号: 03-6421-3785
営業時間: 10~20時