日本のデザイナーズブランドは、中国でどこまで受け入れられるか?
今回の取材で見えてきた中国ファッションマーケットの現状は、①人とは違うデザイン性の強いファッションを求める中国の消費者が増えており、その需要に応えるようにセレクトショップやECも急増していること、そして、②巨大なトレードショーがバイヤーとブランドとの橋渡しを精力的に行っているということがあげられる。
他方、トレードショーだけでなく、バイヤーとブランドとの細やかなコミュニケーションを可能とする場であるショールームが、まだまだその数や、それぞれのキャパシティが不足している状況も確認された。
そういったことをふまえ、中国ファッションマーケットの特徴として考えておくべき点は、3つあるといえるだろう。
第1に、中国の若者のファッションに対する需要、そのマーケットのポテンシャルは、当然のことながら、経済動向に左右されるということだ。
以前インタビューをしたある中国人デザイナーが言った一言を思い出される。彼は、2005年に自分のブランドを立ち上げ、中国のデザイナーズ・ブランドの先駆けとして今でも精力的に活動を続けている。
「ここ20年、中国経済は比較的順調に上り調子だった。それに伴い、消費者も服やバッグなどにもお金を投じるようになった。ただ、2、3年前に経済が落ち込んだ時、百貨店がダメージを受けたことから、今後、中国のファッションシーンは経済の動向に左右される可能性はもちろんある」。
第2に、中国のファッションシーンは、日本や韓国がそうであったように、海外留学からの“帰国組”の若手デザイナーが中心となって牽引している現状があり、顧客である中国の若者も、海外有名ブランドだけでなく、自国のデザイナーズ・ブランドを支持するようになりつつあるという点だ。
中国のデザイナーズ・ブランドを強く打ち出すセレクトショップが増えているのも、このことが背景にある。“中国ファッションの情報発信基地”である上海の動向を、中国各都市が追随するという流れが確実にできており、今後、ますますセレクトショップやECを通じて、ファッションを楽しむ若者の裾野が広がっていることは充分予想される。
先述した中国人デザイナーは、「彼らが先陣をきって中国のファッション界を引っ張っていく傾向は今後も続くだろう。中国ファッションの未来は、比較的明るいと言えるのでは」と、期待も込めて語ってくれた。
こういった状況の下、日本のデザイナーズブランドが受け入れられる可能性はどのあたりにあるのだろうか?言い換えると、中国のデザイナーズブランドも楽しむようになってきた今どきの中国の若者たちに対して、日本のデザイナーズブランドがどのようにリーチしていくか、という課題として整理できるだろう。
この課題は、中国ファッションマーケットの第3の特徴である、「ショールームの不足」が大きく関わってくる。
残念ながら、日本のデザイナーズブランドは、中国の若者はもちろんのこと、中国のセレクトショップや百貨店、EC等のバイヤーにそれほど知られていないため、各ショップでのバイイングが慎重になっているという現状がある。これを解決するには、これまで以上に、日本のデザイナーズブランドと中国のバイヤーとの間できめ細やかなマッチングが行なえる「ショールーム(的な機能)」が急務といえる。
同時に、日本のデザイナーズブランドも、トレードショーへの参加に加え、各ショールームに対して自らブランドをアピールし、よりよい協力が得られるよう積極的なコミュニケーションをはかっていくことも重要だろう。
[取材/撮影:小山ひとみ、文:小山ひとみ+「ACROSS」編集部]