商業施設による「ウィズコロナ」が始まった。
大阪最大の繁華街・梅田の「定点観測」レポート(1)
レポート
2020.06.17
カルチャー|CULTURE

商業施設による「ウィズコロナ」が始まった。
大阪最大の繁華街・梅田の「定点観測」レポート(1)

COVID-19(新型コロナウィルス)と都市空間と生活者のフィールドリサーチ。

東京よりも4日早く緊急事態宣言が解除された大阪・神戸・京都の阪神地区。その中心地である大阪・梅田の街と人びとの変化を、商業施設を軸に定期的に観察することにした。

緊急事態宣言解除で大阪の街は多くの人で賑わった。

大阪府における緊急事態宣言が5月21日に解除され、各社の商業施設の営業が再開された。解除直後は土日を休業としていた店舗や、施設内のなかでも営業を休止していたテナントショップ等も6月に入り、概ね定休日もなくなり通常営業に戻り、当面は営業時間を短縮し、営業再開となった。

6月最初の週末を前にした金曜日は、阪急電車駅コンコースにも多く人が往来し、梅田からほど近い飲屋街の天満は、仕事帰りのサラリーマンや女性たちで賑わっていた。

6月6日の梅田駅。周辺の商業施設を順番にフィールドリサーチしようと訪れると、JR・阪急・阪神など電車は、久しぶりに友達同士やカップルなど複数で買い物に向かうと思われる10代~20代の若者が目立っていた。
 

マスクにフェイスシールド、消毒液、
ソーシャルディスタンシングで模索する新しい接客のスタイルとは。

阪急うめだ本店・阪神梅田本店・大丸梅田店等の百貨店各社では出入り口の封鎖により入店経路を限定し、入り口では複数の職員が検温・手指の消毒やマスクの着用呼びかけにあたっている。入店客の多い店舗でのこういった徹底した対応はいつまで続くことになるのだろう。

店内に入ると、対面接客カウンターにはビニールのカーテンが設置され、化粧品フロアの販売員はほぼ全員フェイスシールドを着用している。床にはフィジカルディスタンスをお願いするステッカー、本来はイベントスペースや催事場のフロアは臨時のレストスペースとして活用されている場が散見された。

阪急うめだ本店の名物として知られているコンコースのショーウィンドウはがらんどう。当面は装飾の展開は見られないのだろうか。

百貨店の営業が再開した際、切らしていた化粧品を買いにいくと、「会えて嬉しい!」。某化粧品のカウンターで会計をしていた女性客と販売員が、嬉しそうに会話するシーンが印象的だった。
 

梅田の主要な商業施設をフィールドリサーチ 。

HEP FIVE(ヘップファイブ)ESTのエントランス付近には、友達同士やカップルで連れ立って買い物する若者が待ち合わせをして賑わっていた。遠出もできず、行くところも特段ないのだろうか、OPA阪急三番街の共有部や階段に座り込んでおしゃべりをする若者グループが見受けられた。

JR大阪駅直結のルクアイーレでは、ベビーカーを押した若い家族連れも見られた。コロナ以前の同広場の人の往来に比べれば大分少ないが、近距離の外出を心待ちにしていたであろう多くの人が買い物袋を下げて歩いている。

グランフロント大阪のファッションフロアの中でも坪数の多いテナントショップでは近隣百貨店と同じようにショップ内の入り口を制限したり、会計時のソーシャルディスタンスを促すサイン、「積極的なお声がけをしない」旨を謳ったポップが掲出されていた。試着や在庫確認にはいつも通り応じてくれる販売員たちと、つかの間の会話を楽しむ買い物客は笑顔で会計を済ませ、ショップを立ち去っていく。

観測されたような利用客への丁寧で細やかな接客アプローチは、感染拡大防止の観点はもちろん、しばらく先の「ウィズ・コロナ 」、「アフターコロナ」に再来店してもらえるその時まで、長期戦の顧客への取り組みとなるだろう。それぞれ“体力”をどこまで温存できるかが問われているように思う。
 

「新しい生活様式」で求められる商業施設の新しいサービスやスタイル。

各社大型の催事やキャンペーンはまだ始まらない。「三密」を発生させる集客を大手を振って声高にすることはできないあいだ、どのような動きがでてくるだろうか。

緊急事態宣言下、EC事業の売り上げ拡大に加えて、デジタルカタログの推進、オンライン接客の実装に乗り出したブランドや店舗、企業は、今後「新しい生活様式」に対応していくと同時に、フィジカルな買い物体験を支える販売員たちのケアにも注力していかなければならないだろう。

 

まだまだ続く梅田周辺の大規模再開発、
「ウィズ・コロナ」のターゲットは?

梅田は、その周辺の街を呑み込み、ゼロ年代後半以降、大規模再開発計画が進行中だ。既に国内有数の高層ビル街になり、マンションやホテルを含み、オフィス街としても拡大し続けている。筆者が大阪の街で社会人になった3年前、半径1キロにひしめく商業施設や地下街の圧倒的な物量には驚かされたものだった。

そして以前はそのどこを切り取っても、訪日外国人観光客の姿があった。大きなスーツケースを転がして大阪駅を闊歩する家族連れ、ラグジュアリーブランドのショッパーをいくつも下げた若いカップル。ここ数年は、いわゆるインバウンドがメインターゲットになっており、街の風景に大きな影響をもたらしていたのは周知の事実だろう。

そんな彼・彼女らが梅田の街から姿を消して数ヶ月。「ウィズ・コロナ」の先にどんな様相で街を歩くのだろうか。
 

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大阪・梅田駅に直結しているルクアも再始動。じわじわ人が戻ってきている。

「もう、大丈夫やろ!」「もう平気なんちゃう?」
都市を象徴する商業施設の原点進化がいま、始まった。

街がそうであるように、店という「場」は、今後どれだけAIが進化していったとしても、変わらず、百貨店やショッピングセンター、商業施設などを運営する企業やそこに出店するブランド/テナントにとってはかけがえのない武器である。

「ウィズ・コロナ」のビジネスやサービスのあり方など、各社まだまだ模索中であり、消費者・生活者も「新しい生活様式」というワードをどのように実装していくのかはまだ道半ばといえる。

「もう、大丈夫やろ!」「もう平気なんちゃう?」。

実際に、大阪や神戸、京都は新規感染者数ゼロの日も続いており、6月19日には、他府県への移動も解禁になるというから、少しずつだが、この状況を捉えるネガティブなムードは軽減される方向に向かっていきそうだ。

「人が集う空間」や「体験」、「サービス」、そして「コミュニケーション」といった都市における商業施設の原点が「ウィズ・コロナ」、「アフター・コロナ 」でどのように進化していくか。大阪最大の繁華街・梅田の場合、ということで、継続的に観察し、レポートしていきたい。

(「ACROSS」関西特派員+編集部)






 


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