ハンドメイドアートストア BONDO(ボンド)
レポート
2012.04.02
ライフスタイル|LIFESTYLE

ハンドメイドアートストア BONDO(ボンド)

“共通点はエネルギー”アーティストのハンドメイド商品を揃える
吉祥寺のセレクトショップ

同店でも人気が高い青木良太さんの器は、まるでオブジェのような緻密さがある。ホワイト釉シリーズのタマゴカップ(Sサイズ3,150円〜)は、光が透けるほど薄く繊細だ。
Candle JUNE(キャンドルジュン)さんによりひとつづつ手作業で作られたキャンドル。BONDOでしか手に入らないオリジナルもある。
NEWSED(ニューズド)のアクリルピアス(2,310円〜)は、端材を組み合わせてつくられているためほぼ一点もの。
クラフト感が漂うMunqa(ムンカ)のメッセンジャーバッグ(26,250円)。ボディにペンドルトン製ブランケット、コンチョにはナヴァホ族のものを使用するなど、随所にこだわりが感じられる。
鹿児島在住の城戸雄介さんが手掛けるONE KILN(ワンキルン)のボウルセット(Sサイズ3,150円〜)。ボウルとプレートがひとつづつセットになっているため、アイデア次第で様々な使い方ができる。
吉祥寺の路地に潜むショップは、壁面に描かれた大胆なロゴが目印。
陶器やバッグ、雑貨など、さまざまなアーティストのハンドメイド商品が揃うセレクトショップ「BONDO(ボンド)」が2011年11月27日にオープンした。場所は、JR吉祥寺駅から三鷹方面へと歩いて約10分、中道通りから細い路地を入ったところ。

運営するのは株式会社BONDO HOUSE。オーナーの村上雄一さん(38歳)は、大学卒業後に大手自動車グループ系の広告代理店に入社。広告営業に携わった後、32歳のときに広告制作会社の営業・プロデューサーに転職した。しかし、もっと自分が好きなことで周りの人も幸せにできる仕事をしたいと考えるようになり独立。36歳だった2010年末に同社を設立し、翌2011年2月にネットショップ「HAND MADE ART STORE “BONDO”(ハンドメイドアートストア ボンド)」をスタートした。

「自分が好きでわくわくできることって何だろうと考えたら、服や雑貨、料理でも何でも、個人の思いが詰まったエネルギーのあるものに出会ったときだったんです。ですが、こだわったものをつくる作家さんは個人の方が多く、売る力や発信する力が強くはない。そこで、もともと人と人をつなぐことが得意だったこともあり、作家さんと作品を求めている人をつなぐようなプラットフォームをつくったらどうかと考えました。作家さんが集合体になることで発信力も出せるし、作品を求めている人にも届くと思ったんです」(株式会社BONDO HOUSE 代表取締役/村上雄一さん)。

「BONDO」の店名は、ハンドクラフトにも用いられる接着剤のボンドに由来。性別や世代を超えて人と人、さらには人とモノをつなぎたいという意味も含んでいる。

入居する3階建てのビルは、もともと税理士事務所だった築50年程の物件。同ビルは、2010年9月に「Arts and Crafts House(アーツアンドクラフツハウス)」(運営:アーツアンドクラフツ株式会社)として、その名のとおり「表現を楽しむ」をコンセプトにした文化発信拠点へと生まれ変わっており、彫金教室「DOVE Tokyo College of Jewelry」をはじめ、「ものつくりカフェFe+」、地元のデザイナーやブランドが集まる「吉祥寺デザイナーズビレッジ」などのアートやクラフト分野の店舗、工房などが集積しているビルだ。

もともと同ビルでは、空いている部屋やスペースを個人のクリエーターに活動の場として間貸ししており、村上さんがアーツアンドクラフツを主催する山田直広さんを知人に紹介されたことから、1階のスペースに出店することになった。

「手作りの温度がある商品を扱っているので、将来的には店舗をかまえて、お客さまに実際に商品を手に取って感じてもらいたいと考えていました。まさかこんな早いタイミングで出店するとは思ってなかったですが、これも出会いです」(村上さん)。

壁面のディスプレイに使用した木の棚は、リンゴ箱をリサイクルして作ったもの。リンゴが輸送されるときに使われる木箱を200箱譲ってもらえるという機会に恵まれ、村上さんと友人とで作り上げたそうだ。中央のテーブルにはステンレスの厨房機器を設置し、ぬくもりある空間を引き締めた。

広さは約15平米。ほのかにラベンダーのアロマ香が漂う店内には、壁から床までボンドが流れるように描かれた大胆なロゴが目を引く。「BONDO」 のロゴやウェブ等のデザインは、ラフォーレ原宿の広告などを手掛け、東京ADC賞、JAGDA新人賞など数々の賞を受賞して注目される博報堂のアートディレクター、長嶋りかこさんによるもの。また、BGMには音楽関係の友人が 「BONDO」 のために選曲したというオリジナルMIX(2ヵ月に一度更新)を使用するなど、空間全体でブランドを表現することにこだわったそうだ。

オープン時のレセプションには、オーガニック食堂&ケータリング「キッチンわたりがらす」を運営する村上さんの弟・秀貴さんが料理を振る舞った。ブログとフェイスブックでの告知だったが、人が人を呼び、なんと300人以上が集まる大盛況だったとか。
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湯飲みの概念を覆すような豊かな色彩が目を引く、桑田卓郎さんの湯飲み(5,250円)。あえて手の痕跡を残しているため、一点一点の表情が異なるのも魅力。
アルバイサ知子さんによるコンテンポラリージュエリーブランドJUTIQU(ジュティク)のバングル。洗練された都会的なエッセンスと女性らしいモード感が漂う今注目のブランドだ。
代表の村上雄一さん。
扱う商品は、陶器やアクセサリー、キャンドル、バッグ、ベビーシューズなど幅広く、大江憲一桑田卓郎SHINGO MATSUSHITAKAGARI YUSUKEなど約25作家の作品を扱う。

売れ筋は、青木良太の陶器や、Candle JUNE(キャンドルジュン) 「BONDO」 のために作ったオリジナルキャンドルなど。作家選びは村上さんの直感が大きな役割を果たしているが、最も大事にしているのは、現代の生活や価値観に合っていること。

「いまの世の中は日々すごく変化しているので、ちゃんと社会と向き合っていないと良いものができないと思うんです。お客さまから見えるイメージは常にハンドクラフトの魅力的なものを扱っているマーケットだけど、現代の生活や価値観に合う旬なブランドを扱っていたい。常にフレッシュでかっこいい状態を保っていたいですね」(村上さん)。

ネットショップの客単価はリアル店舗の1.5倍、作家の名前を検索してやってくる人が多いそう。作家の指名買いが中心のネットに対し、リアル店舗では「きれい」「かっこいい」などの客の直感や衝動で商品が選ばれることも多く、ネームバリューが無い作家の商品やネットでは動かないようなアイテムが売れるのがおもしろみという。

来店客層は、20代〜50代までと幅広く、近隣の住民も多いそうだ。ネットショップでは意外にも40〜50代が中心。若年層は単品購入が多く、40代以上になるとセット買いや高級なものを買う傾向があるというのは、世代間の経済差が影響しているようだ。

ネットショップからスタートした同店だが、店頭では、村上さんが作家一人一人に会って見聞きした作家の思いや、それぞれのモノに込められたストーリーを伝えることを大事にしているそうだ。

「商品の共通点は、エネルギーだけ。人によってその感じ方は異なりますから、お客様のエネルギーに共鳴するものを見つけに来てほしいです」(村上さん)。

今後は、もっとモノの魅力が伝えられるようネットショップのコンテンツを充実させる予定。さらに、ニューヨークなど海外拠点を開設したいと意気込む。

そもそも、村上さんが 「BONDO」 を始めたのには、自分が好きな仕事をするために独立したこともあり、実際にそうやって生計を立てる作家を応援したいという気持ちがあったという。

「パッと見は小売りですが、好きなことをやって生きていけるマーケットや仕組みを作りたいんです。それが発展することで世の中が豊かになると思うんですよね。今の社会で経済成長が見込めないなら、好きなことをやった者勝ちなのかなと思っています」(村上さん)。

東日本大震災後は特に、日本経済及び将来の日本への不安が募っている。世界の金融危機も深刻化するなど、資本主義社会のシステムそのものを見直さざるを得ない状況といえるだろう。そんな状況を受けて安定志向になる若者も多いが、一方で村上さんのように“本当の豊かさ”を求めて、自分の仕事や働き方そのものを見直す人が増えている。彼らが生み出す新しいマーケットに注目したい。

【取材・文:緒方麻希子+『ACROSS』編集部】

BONDO(ボンド)

東京都武蔵野市吉祥寺本町3-3-6 Arts&Crafts HOUSE 1F
営業時間:12〜19時(火曜定休)
TEL:03-5431-6151  URL: http://bondobondo.jp/


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