1500-0001 東京都渋谷区神宮前2-18-4 石黒荘1階3号室
14:00 open/19:30 close(不定休)
TEL:03-6804-1147
※記事及び写真は2009年当時のものです。
表参道ヒルズの脇の道を入った裏原宿の一角にひっそりと登場した、 ビンテージTシャツ専門店「HELLO//TEXAS(ハローテキサス)」。木と鉄を張り合わせた重厚な扉をあけると、落ち着いた白塗りの壁に囲まれた約25平米の小さなスペースがあらわれる。そこには時代を経た今なお独特な存在感を放つ、1970〜80年代のビンテージTシャツが並んでいる。
同店を運営し、仕入れ〜店頭での販売までを全てひとりで行うのは元音楽雑誌編集者の三好智之さん。「アメリカのかけらを売っている」という三好さんは、単なる古着好きは
「ハローテキサス」には用がないとハッキリ言い切る。ここで扱われているのは、アメリカンカルチャーそのものだ。
「TシャツのT字型のコットン・キャンパスなかには、音楽、映画、政治、広告、スポーツなどのビジュアルが描かれていて、その一つひとつに、当時の時代背景や価値観が隠れています。例えば、企業や学校がイベントの際に作ったものや、失踪した家族を捜索する際に作ったものなど、等身大のアメリカを感じることができるものばかり。アメリカの歴史の語りべとなっているそれらのTシャツは、“お洒落アイテム”を狙っていないにも関わらず、生まれて数十年経った今、色褪せや型くずれも含めて、強烈にファッショナブルに映る。そこに“想定外の格好良さ”があるんです」(三好さん)。
同店が扱うTシャツは、主に70~80年代製が中心。もともとボディの生地が薄いうえに、長く着込むことで偶然の色落ちや伸び、汚れなどを含め抜群に格好良い質感になっている、ということから90年代以前のものをビンテージTシャツとして扱っている。「たくさんあると一点一点の価値が際立たず、お客様が選びにくくなる」(三好さん)という理由から、店頭には60~70枚のTシャツを厳選して並べている。
「TシャツのT字型のコットン・キャンパスなかには、音楽、映画、政治、広告、スポーツなどのビジュアルが描かれていて、その一つひとつに、当時の時代背景や価値観が隠れています。例えば、企業や学校がイベントの際に作ったものや、失踪した家族を捜索する際に作ったものなど、等身大のアメリカを感じることができるものばかり。アメリカの歴史の語りべとなっているそれらのTシャツは、“お洒落アイテム”を狙っていないにも関わらず、生まれて数十年経った今、色褪せや型くずれも含めて、強烈にファッショナブルに映る。そこに“想定外の格好良さ”があるんです」(三好さん)。
同店が扱うTシャツは、主に70~80年代製が中心。もともとボディの生地が薄いうえに、長く着込むことで偶然の色落ちや伸び、汚れなどを含め抜群に格好良い質感になっている、ということから90年代以前のものをビンテージTシャツとして扱っている。「たくさんあると一点一点の価値が際立たず、お客様が選びにくくなる」(三好さん)という理由から、店頭には60~70枚のTシャツを厳選して並べている。
一般的な古着屋で扱う古着のTシャツは安いもので500円程度~。相場は2,000~3,000円台であるのに対し、同店の平均価格は5,000~15,000円。さらに2~3万円台以上の高額なものも少なくなく、「古着=安い」という図式はあてはまらない。その基準はTシャツのグラフィックで、三好さんが思う“かっこいい”に基づいて決まるという。そのため有名ロックバンドのツアーTシャツよりも、アメリカの誰も知らない小さなショップや企業のユニフォームが高額になることもあるそうだ。
「ジーンズやワイン、時計など、ビンテージの付加価値がすでに認められている分野においては、“古ければ古いほど価値がある”という考えが広く浸透していますが、Tシャツに関しては、スペックの情報が少ないため、プレミアムの条件をマニュアル化することが難しく誰も着手していない分野だったんです。そのため、ビンテージTシャツは、既にプレミアムの価値が認められているチャンピオン・プロダクツ製のものや、有名ロックバンドのツアーものなどをのぞき、概ね『ただの古着=安いアイテム』として扱われてきました」(三好さん)。
ところが、そんなTシャツの評価がここ数年変化。近年、「DIOR HOMME(ディオールオム)」、「N.HOOLYWOOD(ミスターハリウッド)」や、「Inpaichthys Kerri(インパクティス ケリー)」など国内外の人気ファッションブランドが、90年代以前のビンテージTシャツを元ネタにしたTシャツをリリースするなどデザインやモチーフを中心とした再評価が始まっている点に三好さんは着目したのである。
「そのネタ元でもあるビンテージTシャツが抜群に今っぽく感じられ、これを機にその価値を底上げしたかったんです」(三好さん)。
取り扱うTシャツは3つのカテゴリーに分類され、それぞれのラックに並ぶ。ひとつはロックバンドのツアーTシャツ、ひとつはスクール系などスタンダードなアメカジもの、そして前出のハイブランドのルーツとなるような遊び心やインパクトあるデザインのTシャツだ。また、ユニークなのは、すべての商品に説明タグが付き、作られた年代と、当時どのような意図でそのTシャツが作られたかといった解説がつけられていること。例えば、
“本品は、イリノイ州シカゴの北部に位置する街アルゴンキンの創立記念日に行われるマラソン大会の参加品だ。この地域はネイティブ・アメリカンが多く暮らしている地域として知られる……”など。
三好さんは、買い付けの際にそのTシャツについて現地で徹底した聞き込みを行ったうえ、帰国後にインターネットなどを駆使してリサーチすることで、Tシャツに隠されたストーリーをよみがえらせているのである。また、ハンガーにもオリジナルロゴが刻印されていたり、ラッピングもまず透明のパッケージに入れてからロゴ入りの紙袋に入れるなど、まるでセレクトショップのよう。
また、表参道という立地についても同店ならではの意図が伺える。
「立地については相当悩みました。ただ、『ハローテキサス』は既存のスタイルの古着屋ではないし、ビンテージTシャツの価値を底上げするためには、有無を言わさない場所で勝負しないといけないと思い、ラグジュアリーブランドのショップが並び土地自体のブランド力もある表参道に決めました」(三好さん)。
来客層は、グラフィックデザイナーをはじめ、美容師やショップスタッフ、海外からのアパレル系バイヤーから、「ディオールオム」といったハイブランドのトレンドにも敏感なクリエイター層が多く、三好さんの狙いとぴったり合致したという。ちなみにあの大御所ミュージシャン、エリック・クラプトン氏もお忍びで来店したそうだ。
「古着だけど、安いからじゃなくかっこいいから選んで欲しい」という三好さん。世界的不況、そして空前のSPAブームのなか、アパレル業界は低価格戦争が激化している。しかし、そんな風潮をものともせず、同店では5,000円程度の手頃なものが売れにくく、2~3万円台の高額なものから売れていくという。独自の着眼点で古着の付加価値を掘り起こし、ブランディングした同店は、古着に“ビンテージTシャツ”という新しいジャンルを提示したといえるだろう。
[取材・文/上沼祐樹(フリーライター/エディター)+『ACROSS』編集]